「英雄ネズミ」の銅像が世界に問いかけるもの
カンボジアが、地雷探知で数千人の命を救ったアフリカオニネズミ「マガワ」の功績を称え、銅像を建立した。マガワは非営利団体APOPOが訓練したネズミで、その鋭敏な嗅覚によって地雷やクラスター爆弾を検知。機械式の探知器より軽量で、地雷を爆発させずに識別できる能力は「機械には不可能な精度」として国際的に高く評価された。英国の動物慈善団体PDSAから動物版ジョージ・クロス勲章を授与された唯一のネズミでもある。
この話、「ほっこりするニュース」として消費してはいけない。
ここには「生物の能力×テクノロジーの訓練・運用システム」という21世紀型のハイブリッドソリューションの本質が凝縮されている。そして日本は、この分野で世界から大きく出遅れている。
世界では「バイオディテクション」が産業化しつつある
APOPOのモデルはシンプルだ。動物が本来持つ超感覚的能力を、科学的な訓練プロトコルと運用システムで「再現性のあるツール」に変換する。
現在、世界では以下のような領域でこのアプローチが実用化されている:
- 犬による癌嗅覚診断(英国・日本の一部医療機関でも試験導入)
- 蜂によるIED(即席爆発装置)探知(NATO関連研究)
- タコや蛸類の水質汚染センサー化(EU研究プロジェクト)
- ミツバチのドローン誘導型農薬散布補助(米国スタートアップ)
注目すべきは、これらが「動物愛護の文脈」ではなく「ディープテック投資の対象」になってきている点だ。2023年以降、バイオディテクション関連のスタートアップへのベンチャー投資は欧米を中心に急増している。